e-magazineVol.5 2000.6.22
東京近郊には、数多くの美術館があります。思いもよらない場所で見るアートもなかなかいいものです。
ハラミュージアムアーク

〒377-0027 群馬県渋川市金井 2844
Tel: 0279-24-6585
Fax: 0279-24-0449 開館時間: 10:00 am − 4:30 pm
休館日: 木曜日[祝祭日の場合は開館]

何の因果か、朝5時に起きて埼玉の奥の方まで取材に出かけることになった。関東近県の仕事というのが時間的には一番難しい。いっそ関西や九州ぐらい遠くなってくれれば、泊まりがけで…という楽しみが出てくるが、近場だとわざわざ宿泊費をかけてまでという気持ちの方が強くなってしまう。いきおい、朝早くから出かける羽目になるのだが、平素昼夜逆転の生活を送っている身にとって午前中はまだ夢うつつの時間。眠い目をこすりつつ、退屈しのぎにナビを眺めている(私は助手席)と、「ハラミュージーアムアーク」の文字を発見した。この「ハラミュージーアムアーク」は、1988年に、品川にある『原美術館』の分館としてオープンしたが、場所が遠くなかなか出かけるチャンスがなかった。

原美術館』は、1979年に財団法人アルカンシェール美術財団を母体に、現代美術の専門館として開館。建物は60年以上前に建てられた私邸をそのまま使ってあり、現代建築では得られない雰囲気を醸し出している。

コレクションは1950年代以降の代表的な巨 匠から、今日の第一線で活躍する若手の作 家までと幅広く、敬愛してやまない横尾忠則をはじめ、荒川修作、ナムジュン・パイク、ジム・ダイン、ジャクソン・ポロック、ロイ・リキテンシュタイン 、ジャスパー・ジョーンズ、ロバート・ラウシェンバーグ 、アンディ・ウォーホルといったアーティストの作品の数々を所蔵している。

私邸がベースになっているだけあって、大きなスペースに展示してある美術館とは異なり、何というかとても『プライベート』な空気がついてまわる。一歩外に出れば、日常の喧噪が渦巻いているにもかかわらず、そこだけ時間が止まったような、それでいて濃密な時間を過ごすことのできる、貴重な美術館だと私は思う。

「絵を見に行く」という行為が、何故日常生活の一部になっていないのだろうか。少なくとも「映画を見に行く」のと同じようなレベルにあるとも思えないし、話題にのぼることもそう多くない。大きな美術展に人が列をなすことはあっても、なんだかそれは学校の「美術のお勉強」の延長線上にあるもののように感じてしまう。もちろん、わざわざ海外に行かずに本物に触れる機会を得るというのは、とても大切なことだと思う。ただ、もう少し「日常」の中にアートがあってもいいような気がする。『アート』の話をすると自分の知識のなさを笑われないだろうか?という身構えた気持ちがあるのかもしれない。クラシックファンで、本当に感心する程細かいことに詳しい人がいたりして(もちろんそれはそれで音楽の楽しみ方なのだが)、でも何だか?(はてな)の気分がつきまとう人が多いのは何故だろうか。本当に好きだったら、言葉で説明する必要もないと思うのに、「これこれこういう理由だから、これは素晴らしいのだ」とエッヘンと胸を張って説得されると気持ちが引いてしまう。

要は気持ちの問題なのだと思う。

気がつくと、この仕事をして10年以上になる。よく「デザイナーですね」と言われるが、私自身は自分にデザインの才能があるとは思えない。もちろん仕事をしてお金をいただく以上、何とかよいものをと思って一生懸命考える。でも、それはたぶん私の「学習能力」に因るものだ。

昔むかし、ほんのちょっと絵を描くまねごとをしていたことがある。だが、いつの間にかやめてしまった。頭の中で考えることと、実際に目の前に自分の手によって描き出されるもののギャップに耐えられない。(という程アーティスティックな感覚があったわけではないが)『アート』というものは自分を表現するものである。そこには自分自身の弱さも醜さもすべてふまえた上で表現しなければ、永遠に表面的なものしかできないのだと思う。つまり、そのころの私は自分自身を見つめる強さを持たず、弱い自分自身から目を背けていたのである。と書くと、今ではそうでもないように聞こえるが、何のことはない、変わりはない。ただ、自分の弱さに少しは目を背けずに、薄目を開けてぐらいの感じでは見られる程度に歳をとった程度である。

そんな私でも、絵を見て、文字通り「雷に打たれた」ような経験を何度かした。それまで「この人の絵が好き」といっていた自分が恥ずかしくなる位、「私は今まで何を見ていたのだろう」と思う程、心を揺さぶられた。「絵を見るのが好き」と言っていた私は、単にその行為をしている自分が、他人からちょっとは良く見えるだろうという意識が働いていただけの、『ええ格好しい』に過ぎなかったのである。

そうした中で、色々な美術館を訪れるようになったが、その中でも記憶に残る美術館というのがいくつかある。NYは、現代美術館(MOMA)を見たくて行ったようなものなのに、今すぐにでも見に行きたいのはホイットニー美術館である。この2つに限らず、本当に普通の街の中に美術館がある。そしてたとえば週に1回ぐらいは、夜の8時や9時まで開いていたりする。つまり仕事帰りにも立ち寄れるようになっている。日本でも最近コンサートの開始を少し遅くしたり、様々な試みがなされているので、是非こういった部分はどんどん真似をしてほしいものである。東京都の現代美術館のリキテンスタインの絵を「こんな漫画みたいな絵に何十億も!(確かに高いとは思うけれど)」なんて言うオッサンばかりが美術館の予算を握っている現状では、なかなか難しいかもしれないが。箱モノを作っても、運営する側が天下りの役人だったり(もちろんその人がとても才能ある人であれば問題なが、大概は絵と言っても玄関先に印刷の絵を大仰な額に入れて飾っている程度に違いない)することで、折角のチャンスをみすみす逸しているような気がしてならない。昨日のニュースで、都知事の石原慎太郎がそういった天下りシステムを見直し、恵比寿の東京都写真美術館の館長に識者を当てたというのは朗報なのかもしれない。

関係ないけれど、この東京都写真美術館のサイトはどうにかなりませんか?作った方には申し訳ないけれど、原美術館や海外の美術館のサイトと比較してかなり劣ることは否めないと思う。予算がないのかもしれないが、やはり「感動」を伝えるべき場所は、「印象」は大切にした方がいいような…これでは一昔前の「ホームページ作りました」レベルと言われても反論できないと思う。どうも日本の美術の在り方は、この辺から問題があるのかもしれない。








→広大な庭の中にあるアンディ・ウォーホールのキャンベルスープ缶のオブジェ。裏にサインがある。

同じ敷地内には、「伊香保グリーン牧場」があり、ウェスタンショーや乗馬コーナー、バーベキューハウスなどがあるので、「美術館」だけではなかなか行く口実がない、という方にはお勧めの『言い訳』

ミュージアムショップにはカフェが併設されている。大自然の中で、ゆったりした時間を過ごす、それでけでも価値のある空間だ

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